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賃貸住宅の敷金返還と原状回復義務
マンションを出て行くとき、敷金が返ってこない!あなたは泣き寝入りをしていませんか?
Q1 賃貸住宅を退去する際に多額の修繕費用を請求され,返ってくるはずの敷金から差し引かれてしまいました。敷金を取り戻すことは出来ないのでしょうか?
借家人には、原則として通常の使用によって汚れたり、傷んだりした部分の修繕の修繕義務はありません。不当な修繕費を敷金から差し引かれて、返してもらえない場合は、小額訴訟制度等を利用して敷金の返還請求を行うとよいでしょう。
Q2 原状回復義務とは何ですか?
借家人は、賃貸住宅を退去して明け渡すときには、家具やクーラーなど借家人が運び込んだ持ち物をすべて撤去しなければなりません。これを借主の原状回復義務といいます。また,借家人が建物内を不注意で汚したり,傷つけたりした部分があった場合(例えば、子供の落書き、タバコの不始末による焼け焦げ)は、借主の費用で修理しなければなりません。
Q3 畳が擦り切れているので、畳を替える費用を敷金から差し引いて返還するといわれたのですが、畳を替える費用まで負担しなければならないのですか。?
借家人がどんなに注意を払って使用していても、汚れたり、痛んだりすることは当然にあります。畳の擦り切れも、誰が使用していても自然に発生する、避けられない損傷です。このような通常の使用によって発生したり、時の経過によって自然に発生したりする建物の汚れや傷みを自然損耗(しぜんそんもう)と呼んでいます。自然損耗にあたる部分は、借家人に修繕義務はなく、家主が負担しなければならないので、敷金から差し引くことは出来ません。
Q4 借家人が負担しなくていい自然損耗にあたるのはどのような場合ですか?
畳の裏返し、表替え、畳の変色、フローリングの色落ち、家具の設置による床やカーペットのへこみ・設置跡・タバコのヤニ・テレビや冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気焼け)、壁に貼ったポスターや絵画の跡、エヤコン設置によるピス穴や跡、クロスの変色、壁などの画鋲やピンの穴、網戸の張り替え、地震で破損したガラス、編み入れガラスの亀裂、ハウスクリーニング、消毒、浴槽や風呂釜の取替え、鍵の取替え等は、自然損耗にあたりますので、借家人が修理を負担する必要はありません。
Q5 リフォーム代金やクリーニング代金がかかるので、敷金は返還できないといわれましたが、どうしたらいいですか?
入居中はきれいに使用していて、退去時もきれいに掃除をして明け渡し、不注意で傷をつけたり、汚したところはない場合は,通常,修繕費用を負担しなければならない事情はありません。ましては,次の入居者を確保するために行うリフォームの費用については、退去する借家人に負担義務がないのは当然です。敷金の返還を求めるべきです。
Q6 賃貸契約書の中に、『入居後の一切の修繕費用は借家人が負担する』という条項が定められていますが、いつも借家人が修繕費用を負担しなければならないのでしょうか?
修繕義務を一切借家人に負担させる旨の特約は、積極的に賃借人に修繕義務を課したものとするには特別の事情が必要であるとされており、そのような特約があるからといって、当然に全ての修繕費用を借家人が負担するする必要はありません。
Q7 賃貸契約書の中に、『貸室明け渡し後の室内建具・フスマ・壁紙などの破損、汚れは一切、賃借人の負担において現状に回復する』という条項がありますが、原状回復にかかる費用は、賃借人が負担しなければならないのでしょうか?
原状回復条項は、借家人が故意・過失によって、または通常の使用でない使用をしたために、建物を破損させた場合の損害の回復について規定したものと解釈することになっていますので、借家人に原状回復義務は生じません。
Q8 消費者契約法と修繕特約との関係について教えてください。
2001年4月1日から消費者契約法が施行されました。今後は、修繕義務を一方的に借家人に負わせる条項や原状回復義務条項は、本来家主が負担しなければならない修繕義務や原状回復義務を借家人に負担させるものですから、無効となる可能性があります。
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